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先日、私は兵庫県豊岡市を訪問してきました。豊岡市は、日本やヨーロッパで「幸せを運ぶ縁起の良い鳥」として親しまれながら、絶滅危惧種に指定されているコウノトリの再生にいち早く取り組んできた、象徴的な地域です。石光商事では、豊岡市で生産される「コウノトリ育む農法」で育てられたお米の輸出事業を手掛けております。この取り組みでは、販売金額の一部を豊岡市に寄付し、コウノトリを守る活動の支援を続けています。今回の訪問では、その寄付金を直接豊岡市の門真市長にお渡しするとともに、コウノトリ復活プロジェクトに尽力される地元の皆様の思いを改めて感じることができました。
明治時代までは、コウノトリは全国各地で普通に見られる鳥でした。しかし、乱獲や農薬の影響で激減し、絶滅の危機に追い込まれました。そのような状況の中、1965年から豊岡市ではコウノトリ復活プロジェクトが始まり、科学的な研究や環境整備が進められました。プロジェクトが実を結び、2005年には初めて野生復帰を果たしたコウノトリが放鳥され、現在では全国で500羽以上にまで増加するようになりました。この取り組みは、自然と人間の共存を実現するための模範的な事例といえると思います。
しかしながら、この活動にも課題が生じています。ひとつには、昨今のお米の供給不足があります。コウノトリ育む農法では、農薬を使わずに生物多様性を保つため、通常の慣行栽培よりも手間と工夫が求められます。しかし、慣行栽培でも十分に高い収益が期待できる現状から、生産農家の数はなかなか増えない状況です。もうひとつは、コウノトリ増加による生態系全体のバランスが人間に恩恵をもたらすという点を、次世代に伝え続けていく難しさです。すでに空に舞うコウノトリの姿が見慣れたものとなり、その背景にある意義や歴史が次第に忘れられていくのではないかという懸念もあります。こうした現実を踏まえ、このプロジェクトの次のステージをどのように構築し、進めていくかが重要な課題です。
石光商事として、こうした課題にどう向き合うべきか。まず、私たちは作り手である農家の皆様や地域の方々との関係を深め、課題を共有していく必要性を改めて実感しました。「コウノトリを増やす」という当初の目標だけでなく、コウノトリが象徴する「人間と自然界のすべてとの共存」という理念を大切に育てていきたいと強く思います。これから先は、社会全体を見通しての取り組みが必要だと考えています。具体的には、商品価値とともに、このストーリーや取り組みに込めた思いをしっかりと伝え、お米という商品を通じて、消費者の皆様に「コウノトリ育む農法」の背景やその使命を理解していただくことが、次の重要なステップだと捉えています。
コウノトリという象徴的な存在を通じて、私たちは「幸せを運び、幸せをつなぐ」という使命を果たしていきたいと考えています。この活動は、一つの地域や企業だけで成立するものではありません。多くの人々の協力を通じて未来へと受け継がれ、社会全体の幸せ、そして命の循環を支える活動です。未来を担う次世代へ、この大切なメッセージを伝える役割を果たすことに貢献できることを心より誇りに感じます。
石光商事はこれからも、社会と環境、そして人々の食の幸せをつなげる活動に積極的に取り組んでまいります。今後とも変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げます。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

